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最近の物語

ヨハネの黙示録 4 新約聖書

天の玉座の幻視

その日、パトモス島の岩肌は、いつもより冷たく湿っているように感じられた。ヨハネは洞窟の入口近くに腰を下ろし、遠く地中海の鉛色のうねりをぼんやりと眺めていた。齢を...

ヘブライ人への手紙 6 新約聖書

土台の上の家

エーゲ海の風が、オリーブの木々の葉をかすかに震わせる頃、港町の外れにたたずむ石造りの家に人々は集い始めていた。日が西に傾き、長い影が路地を覆う時刻である。中庭に...

フィリピの信徒への手紙 4 新約聖書

祈りに満たされる平安

エウプロシュネは、一日の終わりにやってくる薄暗がりが最も苦手だった。窓の外、フィリピの街路に灯されるオリーブ油の灯りは、彼女の居間の壁にゆらめく長い影を落とす。...

愛に気づく牧師の物語

その日も、雅彦は教会の牧師書房で深夜まで机に向かっていた。窓の外は漆黒で、街灯の光が斜めに床を照らすだけだった。彼の目の前には、来週の日曜礼拝の説教メモが広がっ...

使徒言行録 25 新約聖書

総督フェストゥスとパウロの上訴

カイサリアの港から吹いてくる風には、いつも塩の匂いと、遠くから運ばれてくる異国の香料の気配が混ざっていた。その風が、総督府の高い窓から流れ込み、机の上に広げられ...

闇の中の道、約束の言葉

過越の祭りのためのエルサレムは、昼間の熱気が石畳に残るような夜だった。家の上の間に集まった者たちの顔は、一つ二つと灯されるオリーブ油のランプに揺らめき、壁に巨大...

安息日の主と麦畑の教え

その日は安息日であった。ガリラヤの丘を抜ける小道は、普段よりも静かで、足元の土の感触さえもが、何かを慎んでいるように思えた。風が通ると、道端に広がる麦畑がざわめ...

マタイによる福音書 18 新約聖書

天国の偉さと赦しの道

夕暮れがガリラヤの丘を柔らかい影で包み始める頃、弟子たちは互いに顔を見合わせ、ためらいがちにイエスのもとに近づいた。一日の教えと癒しの業に疲れ切った表情の中に、...

金の燭台と二本のオリーブ

夜の気配が深まり、オリーブの丘から吹き下ろす風が、衣の端をひるがえさせた。ゼカリヤは、未完の神殿の礎石の傍らに立ち、暗がりを見つめていた。帰還した民の疲れ、再建...

沈黙の預言者アモス

サマリアの丘には、夕日が沈む前に長い影を伸ばしていた。オリーブ畑の木々は、この三年ほど実りが乏しく、枝が細りながらも、かろうじて銀色の葉を風に揺らしていた。道端...

捕囚の誓い ダニエルの選択

ユダの地が荒らされ、エルサレムの城壁が砕かれたその年から、すべては変わった。バビロンの王ネブカドネツァルは、神の宮の宝物を持ち去り、王と貴族たちの子らを捕虜とし...

エゼキエル書 17 旧約聖書

二羽の鷲と葡萄の木の幻

風が、焼けつくような砂漠の熱を運んでくる。何もかもが、色を奪われ、灰色と黄土色の世界に溶けていた。私は、粘土板の冷たさを掌に感じながら、目を閉じた。すると、目の...

エレミヤ書 42 旧約聖書

滅びへの旅路

焼けつくような陽炎が、瓦礫の間にゆらめいていた。エルサレムの崩壊から数月が過ぎ、町はまだ灰と沈黙を飲み込んでいるようだった。北の門近く、ミツパの地に、うずくまる...

偶像彫刻師の葛藤

エルサレムの路地は、夕暮れの煙と共に暮れていく一日のざわめきを包み込んでいた。アヒカムは工房の戸を半ば開け、外の空気を深く吸い込んだ。羊の脂と松やに、遠くから運...

刻まれた木と生ける約束

熱い砂の風が、ユダの丘陵をゆっくりと這い、枯れ草の先をかすかに揺らしていた。エルサレムの城壁の影は、午後の日差しによって短く鋭く刻まれ、路地には人々の気だるい足...

救いの泉の器

その日は、エルサレムの窯からいつもより濃い煙が立ち上っていた。アビヤタルはろくろの前で、またしてもうまくいかなかった壺の粘土の塊を眺めていた。指の腹に残る、冷え...

夜明け前の炉と家族の祝福

夜明け前の闇は濃く、村はまだ深い眠りの中にあった。家の中には、炉の灰の下に埋もれた火種だけがほのかな温もりを保っている。ナオミは目を覚ますと、すぐに床から起き上...

詩篇 149 旧約聖書

賛美の両刃

夕暮れがエルサレムの丘を染め、石膏の壁が淡い桃色に輝く頃、神殿の庭には人々のざわめきが満ちていた。一日の労働を終えた者、巡礼で遠方からやって来た者、老いた預言者...