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最近の物語

イザヤ書 55 旧約聖書

渇きに注ぐ言葉の雨

その日、エルサレムの西の門から続く道は、埃と人々の倦怠で覆われていた。空は鉛色に濁り、遠くで砂漠の熱風がうなるように聞こえる。私はその道の脇に座り、目の前を通り...

イザヤ書 23 旧約聖書

潮の満ち干とティルスの誇り

潮風は、塩と熱せられた瀝青、それに遠くから運ばれてくる没薬の甘い香りを混ぜ合わせ、ティルスの港に満ちていた。陽は灼熱の白さで海面を叩き、無数の帆がそれに応えるよ...

ティルスの落日と再生の預言

港は朝もやに霞んでいた。乳白色の靄が、杉材の船体や、積まれた香木の荷、騒がしい荷役人夫の輪郭を柔らかく溶かしていた。シドンから来た年配の船長は、肘を艤装の欄干に...

伝道者の書 11 旧約聖書

水に投ぐパンの行方

秋の深まりと共に、風はカレドの谷から鋭い息を吹き下ろしてきた。ヨナタンは石垣の縁に腰を下ろし、手にしたオリーブの木片を無意識に弄びながら、西の空に湧き上がる雲の...

箴言 10 旧約聖書

祖父の知恵、父の灯火

雨の朝だった。軒端を伝う雫の音が、土間に規則正しいリズムを刻んでいた。祖父は炉端で座り直すと、火箸で灰を少し掻きならした。 「お前はもう十二だな」...

主を畏れて歩む葡萄畑

その男は、毎朝、夜明け前の冷たい空気が家の中に浸透してくる前に目を覚ました。エルサレムの東、オリーブの丘陵に囲まれた彼の葡萄畑は、今、秋の深まりを告げる淡い金色...

詩篇 64 旧約聖書

闇を射る光

その朝、窓から差し込む光は、冷たく、鋭かった。木村和也はコーヒーカップを両手で包み、オフィスの14階から街を見下ろしていた。下面で蠢く人や車の流れは、まるで蟻の行...

赦しの麦畑

ある春の夕暮れ、エリアムは痩せた土地に鍬を振るっていた。西の空がざくろ色に染まる頃、隣りの畑からは豊かな麦の香りが風に乗ってきた。彼は額の汗を拭い、深く息を吸う...

灰の中の祈り、ヨブの新生

灰が舞い、風がうなる荒野。その中心に、ひとりの老人が座っていた。衣はぼろぼろ、頬はこけ、目だけが、深い淵のように静かだった。ヨブ。彼はもう、神と争う言葉も、自身...

ネヘミヤの祈りと決意

その年の冬は、シュシャンの城に、いつもより長い影を落とした。ネヘミヤは、王に仕える献酌官としての一日を終え、居室の窓辺に立っていた。石造りの宮殿には、夕方になる...

歴代誌第二 15 旧約聖書

主を求める夕べ

(語り手:神殿に仕えるひとりの下級祭司の視点から) それは、暑さがまだ地面に残る夕暮れ時のことだった。私は香料の調合に疲れ、神殿の外廊で休んでいた。十五年という...

癒やしと裏切りのヨルダン川

アラムの王ベン・ハダデの軍勢は、先月の小競り合いでまたしても勝利を収め、ガリラヤの村から奪った戦利品と捕虜をダマスコへと運んでいた。その帰路、軍の総司令官ナアマ...

ヨルダン川の奇跡

夜明け前の闇が、ヨルダン川の流域をまだ深く覆っていた。冷たい砂の上に腰を下ろし、ヨシュアは目を閉じた。耳には、遠くで響く水流の音と、幾千とも知れぬ民の寝息が混ざ...

十戒の宣告

その日、モアブの平原は異様な静けさに包まれていた。乾いた風が、砂礫を微かに転がす音だけが、広大な集団の息遣いをかき消していた。眼前には、老いた指導者の姿。モーセ...

第二の過越と導く雲

シナイの荒野は、朝露が岩肌をぬらす頃にも、もう乾いた風が立ち始めていた。テントの間を抜けるその風は、革や砂、燻した肉の匂いを運び、ここが仮の住まいであることをい...

レビ記 4 旧約聖書

贖罪の雄牛と灰捨て場の道

朝、霧が幕のように幕屋の庭に垂れていた。冷たい湿り気が麻の衣を通して肌に伝わり、私は思わず小さく震えた。手には新しい陶器の鉢、重い。中には今年の初物の小麦粉が、...

出エジプト記 12 旧約聖書

過越の夜と血の約束

夜は深く、エジプトの空には砂塵の匂いがたちこめていた。ゴシェンの地に並ぶ粘土煉瓦の家々では、ともし火が揺れ、不安と沈黙が重くのしかかっていた。モーセの言葉は、す...

妬みと祝福の絆

春の砂漠の風は、まだ朝露の残る岩肌を撫でて、ほのかな土の匂いを運んでくる。天幕の入口に立つラケルは、遠くで羊の群れの鈴の音を聞きながら、両手をお腹に当てていた。...