バビロンの夜明けと約束の走者
夜はまだ深いが、東の空には、すでに鈍い鉛色が滲み始めていた。捕囚の地、バビロン。低い家々の屋根には、いつもと同じく、重く湿った埃が降り積もっている。通りには誰も...
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夜はまだ深いが、東の空には、すでに鈍い鉛色が滲み始めていた。捕囚の地、バビロン。低い家々の屋根には、いつもと同じく、重く湿った埃が降り積もっている。通りには誰も...
かつて、エルサレムの宮殿に影が長く伸びる頃、私は回廊の石畳を歩いていた。大理石の柱に夕陽が赤く染まり、遠くからは祭司たちの詠唱がかすかに聞こえる。私は王に仕える...
その日、ガリラヤ湖は鉛色を帯びていた。夜明け前の闇が、水面を厚いヴェールのように包み込んでいる。岸辺に座る老いた漁師、エリアブは、膝を抱え、遠く東の山々の稜線が...
その日、朝から空の気配が変わっていた。ヨルダン川の西側、ギレアドの丘陵地帯に囲まれた小さな谷間で、老羊飼いのエリアブは、いつもと異なる大気の重さを皺だらけの頬に...
砂漠の風は、記憶を持っているようだった。バビロンの都を離れて十日余り。軋む車輪の音と、足を砂に取られる駱駝の歩みの中、エズラは時折、故郷という言葉の重みを噛みし...
埃が舞い、瓦礫の間にわずかに残る道を、男たちの一団が歩いていた。帰還、という言葉が軽すぎる。バビロンの地で生まれ、父祖の言葉を聞きながら育った者にとって、この荒...
それは油のように濃い、夏のほこりの匂いがする一日だった。オリーブ山の東側の坂道は、ごつごつした岩の間を縫い、陽炎がゆらめいていた。一行はゆっくりと、しかし確実に...
荒野は、記憶そのもののように乾いていた。砂と岩の果てしない広がりは、昼には灼熱の息を吐き、夜には骨まで凍るような冷気をまとった。我々は、この寂寥の中を、幾星霜も...
渋谷の喧騒から少しだけ逃れた、小さな教会の書庫で、哲也は埃っぽい聖書注解書のページをめくっていた。午後の陽差しが窓から差し込み、舞い上がる塵をきらきらと照らす。...