章ごとの聖書の物語。

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イザヤ書 52 旧約聖書

バビロンの夜明けと約束の走者

夜はまだ深いが、東の空には、すでに鈍い鉛色が滲み始めていた。捕囚の地、バビロン。低い家々の屋根には、いつもと同じく、重く湿った埃が降り積もっている。通りには誰も...

裸の預言者イザヤ

その日、エルサレムの丘には、いつもより濃い影が落ちていた。午後の日差しが石畳を白く焼く中、イザヤは家の奥の静かな部屋で、巻物を前に座っていた。窓からは、街の喧噪...

伝道者の書 8 旧約聖書

知恵を求める宮廷の日々

かつて、エルサレムの宮殿に影が長く伸びる頃、私は回廊の石畳を歩いていた。大理石の柱に夕陽が赤く染まり、遠くからは祭司たちの詠唱がかすかに聞こえる。私は王に仕える...

詩篇 125 旧約聖書

主の囲いの中に

山々がエルサレムを取り囲んでいるように、主は御自分の民を、今も、とこしえまでも取り囲んでおられる。...

詩篇 93 旧約聖書

荒れ狂う湖と大いなる御声

その日、ガリラヤ湖は鉛色を帯びていた。夜明け前の闇が、水面を厚いヴェールのように包み込んでいる。岸辺に座る老いた漁師、エリアブは、膝を抱え、遠く東の山々の稜線が...

詩篇 29 旧約聖書

主の声は荒野に響く

その日、朝から空の気配が変わっていた。ヨルダン川の西側、ギレアドの丘陵地帯に囲まれた小さな谷間で、老羊飼いのエリアブは、いつもと異なる大気の重さを皺だらけの頬に...

エズラ記 8 旧約聖書

信仰と共に運ぶ聖なる帰還

砂漠の風は、記憶を持っているようだった。バビロンの都を離れて十日余り。軋む車輪の音と、足を砂に取られる駱駝の歩みの中、エズラは時折、故郷という言葉の重みを噛みし...

悔い改めとブロンズの盾

レハブアムの治世、五年目の秋であった。エルサレムの宮殿では、まだ朝の冷気が大理石の床を伝っていた。王はここ三年、ようやく国を固めたと自負していた。父ソロモンの威...

歴代誌第一 9 旧約聖書

帰還者の系図:記憶を紡ぐ門番

埃が舞い、瓦礫の間にわずかに残る道を、男たちの一団が歩いていた。帰還、という言葉が軽すぎる。バビロンの地で生まれ、父祖の言葉を聞きながら育った者にとって、この荒...

サムエル記第二 16 旧約聖書

罵声と重荷の道程

それは油のように濃い、夏のほこりの匂いがする一日だった。オリーブ山の東側の坂道は、ごつごつした岩の間を縫い、陽炎がゆらめいていた。一行はゆっくりと、しかし確実に...

約束の地を望むモーセの最期

その日、モーセは足に感じる石の冷たさよりも深い疲労を覚えていた。それは荒野の四十年を超える、魂の重みのようなものだった。彼はゆっくりと、ピスガの峰と呼ばれるネボ...

申命記 2 旧約聖書

荒野を越えて約束の地へ

荒野は、記憶そのもののように乾いていた。砂と岩の果てしない広がりは、昼には灼熱の息を吐き、夜には骨まで凍るような冷気をまとった。我々は、この寂寥の中を、幾星霜も...

贖いの朝もや

朝もやが幕屋の周りの野営地を覆っていた。砂漠の冷たい空気が、ほんのりと煙の気配を運んでくる。アヒムは柵の中で一番無傷な雄羊を選び、その首に荒い縄をかけた。羊は抵...

パトモスの黙示

その日も海は鉛色だった。パトモスと呼ばれる孤島の岩肌に、絶え間なく砕ける波の音だけが、時というものをかすかに刻んでいた。ヨハネは洞窟の入口近く、ごつごつとした岩...

今日に響く忠実の家

その日、小笠原忠司は久しぶりに教会の小さな書斎の窓を開けた。外は五月雨の気配を纏った曇天で、湿った風が、机の上に積まれた古びた注释書のページをそっとめくった。六...

鎖の中で書かれた自由

埃っぽい午後の光が、窓格子を通して細く割れて、床の敷かれた藁の上に落ちていた。エペソの町はずれ、借りた家の一室だった。ローマの兵士が一人、戸口に腰を下ろし、彼の...

コリントの信徒への手紙一 10 新約聖書

荒野の戒め、書庫の一歩

渋谷の喧騒から少しだけ逃れた、小さな教会の書庫で、哲也は埃っぽい聖書注解書のページをめくっていた。午後の陽差しが窓から差し込み、舞い上がる塵をきらきらと照らす。...

ラザロの復活

ベタニアの村は、オリーブの木立に抱かれるようにして夕闇に沈みかけていた。家々からは晩の炊煙が幾筋も立ちのぼり、どこかで羊の声が聞こえる。マルタは窓辺に立ち、遠く...