章ごとの聖書の物語。
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最近の物語
ヨハネの黙示録 3
新約聖書
覚醒への筆跡
その日も、書記官ヨセフは、午後の日差しが斜めに差し込む部屋で、羊皮紙と格闘していた。硯の墨は、乾きかけていた。彼は唾をつけた指でそれをなぞり、なんとか筆を走らせ...
フィリピの信徒への手紙 3
新約聖書
ダマスコの光からフィリピへの手紙
エパフロディトスが届けた贈り物に、心が温まった。ローマの監視付きの宿では、羊皮紙が手元にある。窓の外からは、市場の喧騂がかすかに聞こえる。ここで、フィリピの人た...
使徒言行録 24
新約聖書
復活を証す鎖の声
カイサリアの港には、いつもより濃い塩の香りが漂っていた。午後の炎暑が石畳に蓄えられた熱を放出し、ゆらめく蜃気楼が遠くの軍艦を歪ませている。獄舎の一室は、厚い壁に...
エゼキエル書 48
旧約聖書
回復の測り縄
夕暮れが、バビロンの捕囚の地に暮らす人々の粗末な家々を、長い影で覆い始めていた。埃っぽい空気の中、エゼキエルは腰を下ろしたまま、目の前の羊皮紙を見つめていた。こ...
エゼキエル書 16
旧約聖書
契約と背信の記憶
エルサレムの南、ヒンノムの谷を見下ろす高台に立つと、風が変わることがある。乾いた砂塵の匂いから、突然、遠い記憶のような湿った土の匂いに変わる。それは、この丘がま...
エレミヤ書 41
旧約聖書
ミツパの悲劇 ゲダルヤ暗殺
七月の穂の香りが、ミツパの丘に漂っていた。刈り入れがほぼ終わり、町は一時の平穏に包まれていた。バビロンの総督として立てられたゲダルヤは、官舎ともいえぬ質素な家の...
イザヤ書 11
旧約聖書
切り株からの若枝
その日は、埃っぽい風がアナトトの丘を吹き抜けていた。イザヤは工房の窓辺に座り、指先に付いた粘土の感触をぼんやりと眺めていた。外では、父エッサイが何十年も前に植え...
詩篇 148
旧約聖書
夜明けの賛美歌
オリーブ畑の縁に立つエルアザルは、夜明け前の暗がりで外套をまとった。東の山脈の稜線が、まだ紺碧の闇に沈んでいる。彼は理由もなく、むしょうに山頂へ登りたくなった。...