章ごとの聖書の物語。

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最近の物語

荒野の愛と約束の七年

夕暮れが迫る頃、荒野を吹き渡る風は、昼の灼熱を洗い流すように冷たさを増していた。ヤコブは、足元に広がる礫の道を一歩一歩踏みしめながら、背中の僅かな荷物の重みを感...

ヨハネの黙示録 3 新約聖書

覚醒への筆跡

その日も、書記官ヨセフは、午後の日差しが斜めに差し込む部屋で、羊皮紙と格闘していた。硯の墨は、乾きかけていた。彼は唾をつけた指でそれをなぞり、なんとか筆を走らせ...

贖罪の夜、新たな大祭司の光

夕闇がエルサレムの石壁を鈍い金色に染めていた。アルテモンは、油のランプがかすかに揺れる部屋の隅で、古びた羊皮紙を広げていた。外からは、過越の祭りの準備に忙しい街...

フィリピの信徒への手紙 3 新約聖書

ダマスコの光からフィリピへの手紙

エパフロディトスが届けた贈り物に、心が温まった。ローマの監視付きの宿では、羊皮紙が手元にある。窓の外からは、市場の喧騂がかすかに聞こえる。ここで、フィリピの人た...

交わる賜物、一つなる体

エーゲ海からの風が、コリントスの港に昼下がりの湿り気を運んでくるころ、マルコスの家の広い中庭には、人々の声が低く渦巻いていた。石畳の上に投げかけられたオリーブの...

使徒言行録 24 新約聖書

復活を証す鎖の声

カイサリアの港には、いつもより濃い塩の香りが漂っていた。午後の炎暑が石畳に蓄えられた熱を放出し、ゆらめく蜃気楼が遠くの軍艦を歪ませている。獄舎の一室は、厚い壁に...

弟子の足を洗うイエス

エルサレムの都は、過越しの祭りを前にして、一種独特の熱気に包まれていた。路地には羊を連れた農夫の声がこだまし、午後の日差しは石畳を白く焼いていた。その都の、一見...

変貌山の光と信仰の示現

山の空気は鋭く冷たく、登るにつれて足元の小石がごろごろと音を立てた。ペトロは息を切らしながら、イエスの後ろ姿を見つめていた。なぜヤコブとヨハネと自分だけが選ばれ...

汚れた衣から清い衣へ

夜明け前の静けさが、神殿の廃墟を包んでいた。冷たい石の残骸の間を、ゼカリヤの足音だけがこだまする。捕囚からの帰還から数年、再建は進まず、人々の心も荒廃したままの...

沈黙と獅子の吼え

その日、ベテルへの巡礼の道は、埃と悔い改めの言葉でいっぱいだった、と後に人は語った。が、私が覚えているのは、沈黙だ。羊の群れを従え、ヨルダン川の東側の丘陵を下り...

エゼキエル書 48 旧約聖書

回復の測り縄

夕暮れが、バビロンの捕囚の地に暮らす人々の粗末な家々を、長い影で覆い始めていた。埃っぽい空気の中、エゼキエルは腰を下ろしたまま、目の前の羊皮紙を見つめていた。こ...

エゼキエル書 16 旧約聖書

契約と背信の記憶

エルサレムの南、ヒンノムの谷を見下ろす高台に立つと、風が変わることがある。乾いた砂塵の匂いから、突然、遠い記憶のような湿った土の匂いに変わる。それは、この丘がま...

エレミヤ書 41 旧約聖書

ミツパの悲劇 ゲダルヤ暗殺

七月の穂の香りが、ミツパの丘に漂っていた。刈り入れがほぼ終わり、町は一時の平穏に包まれていた。バビロンの総督として立てられたゲダルヤは、官舎ともいえぬ質素な家の...

嘆きの預言者エレミヤ

夕暮れがエルサレムの石壁を鈍い赤に染めていた。丘の上にひとり佇む男の影が、だらりと伸びていた。エレミヤは、眼下に広がる屋根の海を見下ろしながら、喉の奥で滾るもの...

捕囚の地に響く主の約束

その日、風は東から吹いてきた。砂埃が渦を巻き、バビロンの煉瓦造りの家々の間を、うなりながら通り過ぎる。窓という窓は閉じられ、わずかに布切れが垂らされた隙間から、...

イザヤ書 11 旧約聖書

切り株からの若枝

その日は、埃っぽい風がアナトトの丘を吹き抜けていた。イザヤは工房の窓辺に座り、指先に付いた粘土の感触をぼんやりと眺めていた。外では、父エッサイが何十年も前に植え...

荒野の思索者アグル

日は、鉛のように重く垂れ込めていた。ヨルダン川の東、荒れた丘陵地に続く小道を、一人の老人がゆっくりと歩いていた。名をアグルといい、ヤケの息子である。彼の顔は、無...

詩篇 148 旧約聖書

夜明けの賛美歌

オリーブ畑の縁に立つエルアザルは、夜明け前の暗がりで外套をまとった。東の山脈の稜線が、まだ紺碧の闇に沈んでいる。彼は理由もなく、むしょうに山頂へ登りたくなった。...