章ごとの聖書の物語。

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最近の物語

ガラテヤの信徒への手紙 5 新約聖書

御霊に根ざす自由の実

エウセビオスは、朝の涼みがまだ石畳に残る頃に目を覚ました。窓の外からは、羊の鳴き声と、遠くで水を汲む音が聞こえてくる。彼は粗末な寝床から起き上がり、日の光が差し...

知恵ならざる知恵

エーゲ海の潮風が運んでくる塩の気配と、港の喧噪が入り混じるコリントの街は、昼下がりでも淀むことなく動き続けていた。アンドロニコスは日陰の多い路地をゆっくりと歩き...

宣教の旅路:石と光

イコニオムの町は、朝もやの中にぼんやりとその輪郭を浮かべていた。道はほこりっぽく、パウロとバルナバのサンダルには、幾日も歩き続けた旅の土がこびりついていた。会堂...

闇の中の光

エルサレムの夜は、昼間の喧噪が嘘のように深い静けさに包まれていた。日が暮れてからしばらく経ち、街路にはもはや商人の声も巡礼者の賑わいもない。ただ、ところどころの...

ろばに乗る王と枯れたいちじく

オリーブ山の麓には、朝露が銀を敷いたような細道がエルサレムへと続いていた。弟子たちは、いつもより沈黙して歩くイエスの後ろを、何を思うか互いの顔を見合わせながら付...

ヨセフの気づきの道

夕暮れがガリラヤの丘を柔らかな紫色に染めていた。ヨセフは、オリーブの木の下に腰を下ろし、遠くに見える村の灯りをぼんやりと眺めていた。彼の心は重かった。隣人との些...

ハバクク書 1 旧約聖書

沈黙と預言の屋上

エルサレムの西の丘に、ひときわ古い石の家があった。壁は何世紀もの風雨に色を褪せ、ひび割れている。その屋上の小さな平らな部分、人々が「屋上」と呼ぶその場所で、一人...

豊かさの影に消える契約

その年の秋は、なぜかしら、実りがひときわ豊かだった。畑は重たげに頭を垂れた麦穂で黄金に輝き、オリーブの木々は枝が折れんばかりに実をたわませていた。平野を吹き渡る...

神の鉤と滅びの雹

エゼキエルは、その日、ケバル川のほとりで座っていた。流れる水の音は、いつもなら彼の心を鎮めるのだが、今日は違った。空気が重く、皮膚にまとわりつくように湿っていた...

廃墟の祭司と沈黙の啓示

風は、焼けた石の匂いを運んでくる。乾いた、細かい土煙が、裂けた革のサンダルの間から足の甲に降りかかる。アナトは丘の中腹で立ち止まり、肩で荒い息を整えた。目の前に...

エレミヤ書 31 旧約聖書

心に刻まれる新しい契約

夕暮れが、バビロンの平野を鈍い銅色に染めていた。窓という窓からは、異国の神々を讃える声や、鍋の音が聞こえてくる。ここは私たちの家ではない。喉の奥に澱のように溜ま...

廃墟に芽吹く約束

その日が来るまで、ヤシャルは毎朝、荒れ果てた城壁の上に立った。崩れた石の冷たさが足の裏から伝わり、野茨の棘が裾を引っ掛ける。かつて乳と蜜の流れると言われた地は、...

エルサレムの夜明け

エルサレムの城壁に立つと、夕暮れ時の風が、オリーブの木々を通り抜けて、ほこりの匂いを運んでくる。西の空が深い茜色に染まり始める頃、エルカナは石積みの冷たさを掌に...

イザヤ書 1 旧約聖書

偽りの礼拝と真の正義

エルサレムの朝は、いつものように乳香と炭の匂いから始まった。神殿の丘からは、すでに太鼓の音と詠唱が低く響き、早朝の犠牲の煙が青白く棚引いている。街はゆっくりと目...

箴言 20 旧約聖書

正しさの灯り

エルサレムの石板が夕日を受けて淡い桃色に染まる頃、市場の喧噪は次第に収まり始めていた。塵と香料、焼けたオリーブ油の匂いが混じる路地を、ヤロブはゆっくりと歩いてい...

詩篇 138 旧約聖書

岩陰の賛美

秋の深まりと共に、荒野の風は鋭さを増していた。ヨナタンは岩陰に身を隠し、革の水筒の口を傾けた。滴り落ちる水さえ、砂塵をまとって濁っている。遠くで鬨の声が聞こえる...

渇きの谷の賛美

オリーブの丘から吹き下ろす風が、乾いた土の匂いを運んでくる。昼下がりの日差しは白く、岩肌を焼き、遠くに見えるヘルモン山の峰々はかすんでいた。エリムの水辺からはる...

沈黙の中の子羊

その日、朝露がまだ野の草葉に光っていた頃、ヨナタムは丘の上に立って、遠くの村を見下ろしていた。風が彼の擦り切れた外套の裾を揺らす。足元では、彼が育ててきた数十頭...