**幼き預言者サムエルの召命**
夜の静けさがシロの神殿を包んでいた。神殿の奥にある至聖所の前には、神の箱が安置され、金色の燭台がかすかな光を放っていた。年配の祭司エリは、自分の部屋でうとうとと眠りについていた。彼の目はかすみ、体は弱っていたが、それでも神に仕える務めを果たそうとしていた。
一方、神殿の一角にある小さな部屋では、少年サムエルが横になっていた。彼は幼い頃から母ハンナの誓いによって神にささげられ、エリの下で祭司としての務めを学んでいた。サムエルは真っ直ぐな心を持ち、神の前に清く生きようと努めていた。その夜も、彼は神殿の務めを終え、静かに眠りについた。
すると突然、闇の中にはっきりとした声が響いた。
**「サムエルよ。」**
サムエルは目を覚まし、はっと起き上がった。「エリ先生が呼んでおられるのだろう」と思い、すぐにエリの元へ走っていった。
「はい、ここにおります。お呼びでしたでしょうか?」
しかし、エリは困惑した表情で答えた。
「私は呼んでいない。戻ってお休み。」
サムエルは首を傾げながら自分の部屋に戻り、再び横になった。しかし、しばらくすると、再び同じ声が聞こえた。
**「サムエルよ。」**
再びサムエルはエリの元へ駆けつけた。
「はい、お呼びでしたでしょう?」
エリは少し驚いたが、やはり答えた。
「いや、呼んではいない。戻って寝なさい。」
サムエルはまだ主の声を知らなかった。当時、神の言葉は稀で、幻も少ない時代であった。しかし、三度目に声がかかった時、サムエルは再びエリの元へ急いだ。
「はい、参りました。お呼びでしたよね?」
その時、エリは悟った。これは神の御声に違いない、と。
「サムエルよ、もう一度寝なさい。もし再び声が聞こえたら、『主よ、お話しください。しもべは聞いております』と答えなさい。」
サムエルは頷き、自分の場所に戻った。彼の心は静かだが、どこか緊張していた。神の声を聞くとは、どういうことなのだろうか?
すると再び、主はサムエルを呼ばれた。
**「サムエルよ、サムエルよ。」**
サムエルは震える声で答えた。
「お話しください。しもべは聞いております。」
その瞬間、神の言葉がサムエルの心に深く響いた。主はエリの家について厳しい裁きを告げられた。エリの息子たちが神を侮り、民の犠牲を貪っていたが、エリは彼らを戒めなかった。そのため、エリの家は永遠に罪から清められることはない、と。
夜が明け、サムエルは起き上がった。彼はエリにこの言葉を伝えるべきかどうか、ためらっていた。しかし、神殿の務めを始める時、エリが彼を呼び止めた。
「サムエルよ、主はあなたに何と告げられたのか。隠さずに話しなさい。」
サムエルは深く息を吸い、神の言葉をすべて伝えた。エリは静かに聞き、最後にうなだれた。
「それは主の御心だ。主が良いと思われることをなさるのだ。」
それから、サムエルはイスラエル全体に認められる預言者として成長していった。主は彼と共におられ、その言葉は一つも地に落ちることはなかった。
こうして、幼きサムエルは神の声に応え、イスラエルの歴史に大きな役割を果たす者となった。彼の信仰と従順は、神の御心を行う者の模範として、後の世代にまで語り継がれていくのである。
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